捏造新聞

ただし朝日新聞ではない。

年寄り認定 我が家に還付金詐欺の電話がかかってきた。

まさに馬鹿丸出しだな。

振り込め詐欺のニュースを見ての、だまされた年寄り連中に対する私の感想である。だます方はもちろん悪いが、だまされる方も詐欺を発生させているという点において同罪なのだ。

で、あなた。昨日、私の家にも還付金詐欺の電話がかかってきた。私も年寄りだから、ターゲットになる可能性は十分にあったのだ。いやあ、歳は取りたくないものだ。

私は個人事業主だから、毎年確定申告を自分でやっていて、去年からはスマホで済ませている。三日ほど前に「還付金の件、e-Taxのサイトで確認してちょ」とメールが入っていたばかりだ。

電話がかかってきた瞬間、その内容に不備があったのかと早合点してしまった。で、そのまま私がコロッとだまされたら話としては面白いのだが、いかんせん相手が馬鹿すぎた。どこから漏れた情報か知らないが、わかっているのは本名と電話番号だけのようだ。どの市の税務署かすら名乗らなかった。

「わたくし税務署の」と話しはじめたのだが、電話のディスプレイに「表示圏外」と出ているのである。まず、この時点で警戒されるに決まっている。表示圏外が出たのは初めてなのだが、こんな電話、役所ではまず使わないはずだ。

次に「所得税を払いすぎていて、何年か分の還付金があります」などと言い出した。私の場合は、所得税の払いすぎはあり得ないのだ。さらに「去年の10月に通知が行っているはずですが、同封の書類を返送されておられませんね」と言うのである。

私は、老人だが記憶力はさほど衰えていない。「いや、去年の10月にはインボイス制度のリーフレットが送られてきただけですな」と即座に返答すると、「あ、あ」と慌てているのである。馬鹿め。

まあ、暇だったから相手をしたのだが、少し面白いと思ったのが、「2種類の書類番号を言いますのでメモしてください」と指示された点である。

493811と985532である。ああ、なるほど。これがATMで入力させる数字なのか。最初は振込先かと思ったのだが、桁数が違うようだし、遂行前にバレて警察に通報されれば、せっかくの振込先が無駄になる。

考えるに、これは振り込ませたい金額なのだろう。ATMに行かせて預金額を聞き出し、その金額に合わせて「では、書類2の番号を入力してください」などと指示するのだ。なるほどなあ。馬鹿なりに考えているようだ。

税務署を名乗る男から電話があった後、一時間ほどしてから銀行の「時間外担当」を名乗る男から電話があった。ああ、そうか。銀行員の注意をひかないように、窓口業務が終わってから行かせようというのだな。

「今日が期限となっていますので、今から銀行まで行ってください」

いやいやいや、いくらなんでも無茶すぎる。税務署には、私の銀行口座は登録されているし、そもそもそんな手間をかけさせる訳がない。

「えっ、今から行くの!?」と私は、わざとらしく驚いた口調で言った。

「いやあ、今、雨降ってるし、ちょっと遠いからなあ。えっ、なに? ローソンでもいいって? う~む、私はローソンが嫌いなんだよなあ(嘘)。ネーミングの意味としては、Low+損でしょ。よくこんなのを採用したよなあといつも呆れてたんですよ。実は私、ネーミングを生業としておりましてね。いやあ、ネーミングにはいつも頭を悩ませております。まあ、聞いてくださいよ。あるたこ焼き屋のネーミングではね」

などと愚痴をこぼしていると、ガチャッと通話が切れてしまった。もっと相手をしたかったのだが、本名と電話番号は知られているから、あまり煽らない方がいいのである。夜中にイタ電でもされたら困るのだ。

本当は、銀行まで行って「え~っと。預金残高ですか? 58円ですね。ええ、たったの58円です。何を隠そう貧乏人です。今から58円振り込みましょうか? ワハハハハハ」などと笑ってやりたかったのだが、ちょっと残念である。

しかし、騙された人たちは、こんな展開の中、わざわざ銀行まで行っているわけで、何だろうな、いくらなんでも思考力がなさ過ぎなんじゃないだろうか。

こんなことを言っては申し訳ないのだが、やっぱりだまされる方も馬鹿丸出しなのだ。ちなみに小学生の女の子がつくった標語を最後に紹介しておこう。

「かんぷきん 世の中 そんなに甘くない」